OSAMUGOODS COMPANY

OSAMU'Sマザーグースのキャラクター達が、9編の楽しい物語の主人公になったスペシャルブック。
ファンなら誰もが枕元に置いていた本、『BEDTIME STORIES』をご紹介します。

● 恋のソーング・マシーン

鈴木 海花

P.188-193

「ねえジル、創立五十周年の記念として、学校がチア・ガールの新しいユニフォーム・デザインを募集しているの知ってる?」
「そういえば、そんなこと聞いたわ。」
「ねえ、応募してみたら?あんたならきっと採用されるようなステキなデザインが出来てよ。一等になると奨学金だ何だのもらえるそうだし、だいいちすごい名誉よ!」
毎日元気なく沈み込んでいるジルを見かねてフランが言った。
「どうせだめよ。」ジルが気のない調子で答えた。
「でも、この夏はまだ一着も新しい服を縫ってなかったわ。」
「そうよ、あたしもあんたが元気を出して、まず手はじめに、独立記念日の花火に着て行くドレスを作ってくれたりしたら、スゴーク助かるんだけどな。胸をさ、こうぐっと開けたのにしたいと思ってるんだけど、相談にのってくれない?」
フランが、新しいファッション雑誌を持ち出して来て言った。
「こんなのどうかしら、えっと、これこれ。赤としろのストライプで作ったら目立ちすぎちゃうかしら?小さな白い上着を組ませれば肩が沢山出ても、母さんたちに文句言われないわよね。」
「フランたら、全く調子いいんだから。」と言いながらも、華やかなグラビア・ページを見ている内にまたデザインを考えたり、ミシンを踏んだりしたくなってきた。

『この夏の流行は大胆な抽象模様のプリントです。シルエットはシンプルに、ウエストを思い切りしぼります。太目の方は早目にダイエットを!!』と雑誌は言っている。

「午後から町へ行って、二人で布を見てこない?」ジルが元気づいたのを見て、フランが言った。


コンテストの審査が休暇中に行われるため、応募の〆切りまで、あと二週間しかなかった。ジルは、フランのドレスを縫い上げてしまうと、次の日から何もかも忘れてチア・ガールのユニフォーム・デザインに没頭した。

〆切りギリギリの七月十五日に学校の事務室に応募のスケッチを提出してしまうと、またもやあのたまらない孤独感がもどってきた。相変わらず雨が降らず、町はセピア色の写真のように、太陽に焼けて古ぼけてみえた。

ジルは、すでにトップテンからすべり落ちてしまったリッキーの「プア・リトル・フール」をくり返し聴き、新学期のためにチェックのスラックスを一本縫い、ティーンエイジャーの探偵が活躍するシリーズものの推理小説を三冊読んだ。それからベッキーと二人で、『あきらめないで下さい、足りない分はこのセンセイショナル・ブラがお手伝いします!!』という宣伝文句にのせられて、ハリエット会社のワイヤー入りのブラジャーを二枚、メイル・オーダーした。
こうして、食べきれないで無駄になったごちそうのような夏が、ゆっくりと過ぎて行った。

 

AURORAL AUTUMN 秋

新学期が始まって三日目の朝だった。新しく三年生の担任になったオースティン先生がお昼休みの前に「私の部屋へ来るように。」とジルに言った。
「担任になってまず、あなたにこんなうれしいニュースを伝えることができるなんて、私も本当に名誉に思いますよ。ジル、あなた、応募したコンテストで一等をとったのよ!あなたのデザインが、新しいユニフォームとして採用されることになったの、おめでとう!」うそだ、こんなことが実現するなんて、うそに決まってる。こんなことを言われるより、「ジル、あなたは今度背中に羽根が生えたから、飛べることになりましたよ。」と言われた方がずっと現実的にきこえるというものだ――ジルは教科書を胸に抱きしめたまま、しばらくの間廊下にたたずんでいた。いっしょにお昼を食べることなっていたベッキーが心配して様子を見に来てくれなかったら、お昼休みをますますそこで立ちつくしていたことだろう。

 

OSAMUGOODS STORYより「OSAMUGOODS BEDTIME STORIES」

ー あとがきより ー

マザーグースのうたをテーマに、OSAMU GOODSのキャラクター達が生まれてから、早くも十年近く(サイト編集部注:この本が出版された1984年時点で)たちました。

皆さんに可愛いがっていただいた彼らも、すこしずつ生長したようです。
このたびは、彼らのひとり一人を主人公にして、楽しい物語を書いてもらうことになりました。

たとえば、いつもへいの上から転落ばかりしていた、あのハンプティ・ダンプティは、安西水丸さんのハードボイルド・タッチによって颯爽たるダンディ(?)に変身し、いつも丘の上の井戸に水を汲みにいっていたジャックとジルは、鈴木海花さんの筆によって、ロマンチックなラブロマンス物語のヒーローとヒロインにしていただけました。
他のキャラクター達もそれぞれに、素晴らしいストーリーを演じることができて、さぞかし喜んでいるに違いありません。

この本を名付けて、オサムズ・マザーグースの「ベッドタイム・ストーリー」。あなたが、夜おやすみになる前に、ひとつづつお読み下さい。そして、その後に見るあなたの楽しい夢の中で、彼らも一緒に遊んだり話したりして、あなたの親友の仲間に加えられることを願っています。

おやすみなさい。

原田 治