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東1丁目劇場施設にて開催中!『原田治 展「かわいい」の発見Osamu Harada: Finding “KAWAII”』の初日をレポートします。

札幌市の中心部にある東1丁目劇場施設で、7月6日(土)より『原田治 展「かわいい」の発見Osamu Harada: Finding “KAWAII”』が開催中です。
これまでの美術館施設とは異なり、劇場のステージで開催する本展はその斬新な空間も見どころのひとつとなっています。

会場は2011年に劇団四季の専用劇場として誕生した施設です。ディズニーミュージカルの『ライオンキング』や『リトルマーメイド』など、名作が上演されました。現在は札幌市が運営し、演劇人が立つ舞台・稽古場として、また展覧会やビエンナーレなど「新文化芸術施設」として利用されています。

札幌での開催は今回で2度目となります。2020年に大丸札幌店7階ホールで行われた際は2週間の会期でした。見逃した人も多く待望の開催とあって、初日からたくさんのファンが詰めかけました。

また地元テレビ局や新聞社が取材に訪れ、本展を心待ちにしていたファンにマイクを傾けるなど、華やかなスタートとなりました。

『原田治 展「かわいい」の発見Osamu Harada: Finding “KAWAII”』は8月25日(日)まで開催、その後釧路市立美術館へ巡回します。

初日の開場30分前の様子。入り口前には長蛇の列ができ、来場者はオープンを心待ちにしていました。

劇場の赤い扉が開かれ、『原田治 展「かわいい」の発見Osamu Harada: Finding “KAWAII”』が待望のオープン!

ご来場いただいた方に本展オリジナルのメッセージカード(数量限定)がプレゼントされました。詳しくはこちら

入り口の展覧会パネルは記念撮影スポットに。

会場へ続く通路は劇場らしい華やかさと高揚感のあるカラーリング。展覧会の期待も一気に高まります。

劇場の扉から客席とジルのネオンサインがちらりと見えます。

暗幕の通路を超えて右に曲がると、展覧会がはじまります。

Introduction

1970年代後半から90年代にかけて、女子中高生を中心に爆発的な人気を博した「OSAMUGOODS(オサムグッズ)」の生みの親、原田治(1946–2016)。

50〜60年代のアメリカのコミックやTVアニメ、ポップアートなどから影響を受けたイラストレーション―とりわけ、簡潔な描線と爽やかな色彩で描かれたキャラクターたちは、その後の日本の“かわいい”文化に多大な影響を与えました。

没後初の全国巡回展となる本展では、イラストレーターとして活動するきっかけとなった、1970年代「an・an」の仕事をはじめとして、広告・出版・各種グッズなど多分野にわたる作品を中心に、幼少期~20代前半の初期資料や、エッセイ集『ぼくの美術帖』関連資料も交えて展示し、時代を超えて愛される、原田治の全貌に迫ります。

EXHIBITION

展覧会が始まります

入り口から中に入ると、暗く細長い通路の先にジルのネオンサインがポンっと浮かびあがって見えます。ネオンサインの方へ歩みを進めると、真っ赤な客席が視界に入ります。最初の見どころはネオンサインと客席。立っているのはステージの上なのです。劇場で開催する展覧会だということを強く印象付ける仕掛けになっています。

「an・an創刊、 イラストレーターデビュー」より。雑誌『an・an』はファッション誌『ELLE』の日本語版『anan ELLE JAPON』として創刊されました。展示されているのは1972年2月20日号の切抜き。表紙イラストレーションを原田治さんが担当しています。

イラストレーターデビューとなった「オサムくんの意地悪シール集」。ニューヨーク滞在中に描いたイラストがアートディレクターの堀内誠一さんの目に留まりました。雑誌『an・an』の創刊準備をしていた堀内さんは、市場調査として出版された『平凡パンチ女性版』第4号にこの“オサムくん”のイラストを起用しました。

大学卒業後、ニューヨーク滞在中に描いたプッシュ・ピン風のカットが壁紙となって紹介されています。堀内誠一さんの目に留まったイラストで、「オサムくんの意地悪シール集」の元になっています。

ペーター佐藤さんと共同で仕事をすることが多かった初期の仕事を紹介しています。左は雑誌「an・an」1975年4月20日号の誌面切抜き、右は左の誌面で使用した挿絵原画。誌面のイラストと原画の見比べができる展示になっています。

雑誌『an・an』1975年4月20日号、誌面のクローズアップ。左上、手書きコメントにご注目。「ペーター&オサムスタジオオリジナルのピンナップポストカード…ポスターサイズのオリジナル限定版プリントがかわいいヨ!」。

前ページの誌面に掲載されていたピンナップポスターは、本展のポスターコーナー(1975年ごろ制作)中央に展示されています。当時流行していたアール・ポップ調(軽いジョークを好む乾いた都市的感覚)の作品をチェックして。

左に「オールラウンドのイラストレーターとして」、正面には1975年ごろ制作したポスター。この一角は異なる描写スタイルのイラストレーションで構成されています。原田治さんの天性の画力と職人的な姿勢に引き込まれる展示です。

熱心に観ていた二人組にインタビューしました。「ロフトでグッズを見かけたり、いくつか持っていて認知はしていましたが、詳しくは知りませんでした。お互いイラストを観たり描いたりするのが好きです。色使いや塗り方、描き方を雑誌によって変えているのですね。どの作品も好きですが、特に好きな絵柄や描き方・色合いが見つけられてとても楽しかったです。」

「装幀の仕事―思考を包むパッケージ」より。原田治さんが本の装幀や装幀画を手がけていたことはあまり知られていません。作家の名前やベストセラータイトルを見て「これも原田さんの仕事だったんだ!」と足を止める方が多いコーナーです。

「装幀の仕事―思考を包むパッケージ」を観ていた親子にインタビューしました。「OSAMU GOODSはリアルタイムで集めていました。赤川次郎さんの作品が好きで読んでいたのですが、原田治さんが表紙を描いていたと知らなくて “これもそうだったんだ!”と、嬉しい発見がありました。」「母が持っていたグッズが家にあって “かわいい!”と思っていました。2020年に大丸札幌店で開催された展覧会を観に行って、今回2度目です。やっぱりかわいいですね!」

本展は異例の“劇場で開催する展覧会”。ステージの上が展示会場です。観客がステージの上に立つというユニークさ。東1丁目劇場施設ならではの特別な体験ができます。

展覧会への誘導や展示空間が違和感なく仕上がっているため、ステージ上であることを忘れてしまいますが、天井を見上げれば吊るされた背景幕や照明器具、キャットウォークが視界に入り、今どこに自分が立っているのかを確認できます。

この高い天井部分が暗闇となって、展示壁面とコントラストができ作品全体に光が集められ、一層華やかに見える効果が生まれています。

縦長のステージは、厚みと高さのある壁面でリズミカルに仕切り、L字型にして展示作品を巻き込みながら配置する、先にある展示がちらりと見えるなど、期待感をかき立てる展開にして観客を飽きさせないよう工夫されています。

また、ブースの前後に関連作品が配置されていることもあるので、行きつ戻りつしながら「かわいいの発見」をお楽しみくださいね。

原田治展のトリビア

  • 「ニューヨークへ」コーナーで展示している「ニューヨーク滞在中のノート」のイラストは、会場によって変えています。壁紙のイラストとともにこちもご注目を!

  • 「広告・パッケージの仕事」コーナーで展示しているカルビーのポテトチップスのパッケージは、地域限定「北海道バターしょうゆ味」バージョンに。

広告やグッズの仕事など人気の展示が続きます

「広告・パッケージの仕事―ロング・ライフ・イラストレーション」より。カルビーポテトチップスのマスコットキャラクターやECCジュニアのマークなど「懐かしい!」「これ知っている!」の声が上がる人気のコーナーです。

【画像左】OSAMU GOODS以降のライセンスグッズを紹介しています。動物が大好きだった原田治さん。上野動物園のグッズやムーニーのキャラクターのかわいらしさを会場で確かめてみて。

ひとりで来場していた男性にインタビューしました。「原田治さんはミスタードーナツやポテトチップスのキャラクターを描いたイラストレーターだと認識していました。最近原田さんの本を見る機会があり、デザインがシンプルでカッコいいし、色彩も良いなと思って。展覧会を観て、キャラクターの顔がシンプルでもダイナミックに表現されていて凄いなと思いました。ミスタードーナツのキャラクターが特に好きです。」

【画像右】「パレットクラブ」の活動を紹介するコーナー。メンバーは原田治さん、ペーター佐藤さん、新谷雅弘さん、安西水丸さん、秋山育さん。気の置けない仲間たち5人が集まり1979年にグループ展を開くことになり、ペーター佐藤さんが「パレットくらぶ」と命名しました。

グループ展の作品は、仕事とは違った豊かな知識と趣味世界で作られていました。岸田劉生が好きだった原田治さん。麗子像をオマージュした絵皿(制作年不詳)を制作しています。

「かわいい」には、時代性や趣味性を凌駕する普遍性があるという発見。それを証明するように、性別も年齢も国籍も超えてOSAMU GOODSファンは今も増え続けています。

osamugoods.comを見て来場されたご家族。お母様は80年代に手芸屋さんで生地を買ったりミスタードーナツのグッズを集めたり、今でもグッズを愛用しているファン。お父様も80年代に読んでいた雑誌『ポパイ』や『ブルータス』でイラストレーターの原田治さんを知っていたそう。「グッズだけではない原田さんの歴史を知ることができて感激してます!」

札幌の会場ではひとりで来場される若い男性が多く、新たなファン層を発見できました。

「かわいいの発見」コーナーの隣に、ドッグのネオンサインがあります。人気の撮影スポットをお見逃しなく。

原田治さんの言葉と、奥に見える黒澤明監督作『生きものの記録』について描いた、朝日新聞の仕事。 “かわいい”という思いは平和なくして成り立たないと感じる演出です。

最後に

ジャックのネオンサインで本展は終幕します。最初のジルのネオンサインと同様に、細長い通路の先にジャックのネオンサインがあり、近づいていくと客席が見えてきます。最後に改めて来場者がステージ上に立っている面白さを再確認できます。劇の登場人物になったような気分で客席を見渡せる、という特別な体験をこの機会にお楽しみください。

最後尾席からの眺め。ステージを見ると、ジルとジャックのネオンサインが背中合わせで設置されているのが分かります。

ミュージアムショップ

ホワイエに特設ミュージアムショップが登場。DUSTY MILLER復刻コインパースや復刻フェイスタオルは東1丁目劇場施設及びオンラインショップで先行販売中です。展覧会の後は、ミュージアムショップでお買い物を楽しんで。グッズの詳しい情報は下記からご確認ください。

東1丁目劇場施設(旧北海道四季劇場)

〒060-0041 北海道札幌市中央区大通東1丁目10
 
JR「札幌駅」より徒歩15分
札幌市営地下鉄東西線「大通駅」から徒歩6分
地下鉄「バスセンター前」駅2番出口より徒歩5分

※会場に駐車場はありません。公共交通機関をご利用のうえご来場ください。
※車いすご利用の方は専用駐車場に駐車できますが台数に限りがあります。事前に電話でお問い合わせください。

URL:https://event.hokkaido-np.co.jp/osamu/

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