「ニューヨークの秋」というスタンダードナンバー曲が好きだからなのか、もともと自分がニューヨークの秋の季節を特に好きだったのか、どちらが先だったかはもう思い出せないけれど、今でも秋になると、例えば若い頃に住んでいたセントラルパークの辺りをありありと思い出すことができます。

それで毎年、ジャズで色々な人の演奏したり唄うこの曲を、何度も飽きずに聴いてしまいます。小唄のような、ちょっとメランコリックな曲は、一瞬にして何十年前の空気や枯葉の匂いを自由自在に想い起こさせて、タイムスリップさせてくれます。

名曲というのはスタンダードナンバーとなって、人々がなんども何度も繰り返し聴き、そのたびに精神をリフレッシュしてくれる不思議な装置のようなものですね。
歳をとるということは、思い出の数がその分増え続けることですから、ぼくにもいよいよもってスタンダードナンバーが大切なものになりました。

若い頃に何でも聴いたり観たりしておくことは、一種の財産みたいなものでしょうか。今考えると、ちょっとオタクだったことがかえって良かったような気がします。強かった自分の好奇心に感謝したい。