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PALETTECLUB特別企画 原田治のイラストレーション展

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服部_あの、アレ【6】見ました?一番向こうの…版下。
菊地_あぁ、見た見た。ZAZIEの。
服部_ZAZIEの…『オリーブ』の。あれは線画で描いて、色指定で…
菊地_うん。
服部_出来上がりは線が出ないようにね。けぬき合わせ(※1)で…
菊地_うん。
服部_あれ、すごいね。想像でやってるんだもんね。
菊地_まぁね…
服部_色指定で…
菊地_…ね。色指定自体が?
服部_うん、そう。
菊地_色指示書があったでしょ?「返してください」みたいなのを書いてあるヤツ…

服部_だから、あの…色鉛筆とかで塗って、大体のイメージ決めて、それで色のパーセント決めて…指定してってやってるんだけど。それって難しいんだよ。正確にやるには。

菊地_まぁね…
服部_今のやり方だとコンピューターで全部確認しながらになっちゃうから。
菊地_うんうん。

(※1)けぬき合わせ…色面などを隣合わせに配置するとき、境目がないように配置すること

1988年から1989年に掲載された雑誌『Olive』の漫画。線画の原画と色指定紙を並べて展示してある。当時は現在のようなデータによる制作・印刷ではなかった為、イラストを制作する際は、仕上りを予想して色指定に指示を書き込み、印刷会社はその色指定に合わせて色付けを行っていた。

【左】「ZAZIE」の色指定紙。治さんの細かな指示が書き込まれている。 【右】実際に掲載された「ZAZIE」の漫画。

服部_アレ【7】素晴らしいね。(BIGIの方を指して)
菊地_ふふふ(笑)すごい壁だね(笑)
服部_BIGIです。
菊地_BIGIの商品だったの?
服部_BIGIの商品だったんです。
菊地_へぇ…
服部_BIGIのデザイナーの小栗壮介さんっていう人が…多分(原田さんの)大学の同級生だったのかな。
菊地_へぇ…
服部_それで多分、制作することになったと思うんですけど。
菊地_メンズBIGI。一回だけやったことあるの、カタログ。
服部_え?やったの?
菊地_うん。
服部_意外でしたね。
菊地_うん(笑)全くウケなかったの!
会場_(笑)
服部_(笑)
菊地_(笑)どこにも(笑)一回で首になった(笑)あははは(笑)
服部_(笑)
菊地_マニアックで(笑)

「BIGI」1970年初め。当時メンズビギを立ち上げた治さんの大学時代の同級生の小栗壮介氏よりクラシックハリウッドムービーのスターたちをテーマにイラストでスポーツウェアを作りたいと依頼。

服部_菊地くんってイラストレーターに発注する仕事ってのは…あんまりないの?
菊地_うん。
服部_へぇ…全然ないですか?でもあれでしょ?あの…『ケダマ』。
菊地_大概アレだから。あの…ありようのない書き手言葉だから…
服部_ふーん。書き下ろしなの?

菊地_全くないことはないけど…。まぁ、どちらかというと絵、扱いだから。画家っぽくもあるし…イラストレーターの場合でも、完成品の絵を描いて、それを紹介しているっていう感じだから。所謂イラストレーションって感じでは…

服部_でもイラストレーターと打ち合わせして、こう…「こういうの描いて欲しい」とか、そういうやり取りの上での仕事とかは…?
菊地_それはでもねぇ…長崎さんくらいですねぇ?長崎訓子さん…
服部_長崎さんと仕事してんの?
菊地_ちょいちょいありますよ。
服部_ふーん。
菊地_まぁ、昔から長崎さんと親しくしてもらって。あの人、抜群に上手いですよね!
服部_うん。
菊地_一応ラフを描くの。こんな感じでって。
服部_それは菊地くんが描くの?
菊地_うん。長崎訓子風に(笑)
会場_(笑)
服部_(笑)
菊地_で、はーいって。こういう感じでしょ~ってなると、いやいやこうだろう、みたいなB案が送られてくるの。それがめちゃくちゃ上手い。
服部_あ、長崎さんも一応、A案では出してくるんだ?
菊地_そう!
服部_それでB案の方がいい?
菊地_大概いい!
服部_ね!そういうもんだよね。
菊地_そういうやり取りをして面白いですよね。

服部_結構難しいよね、イラストレーターと打ち合わせして、絵を描いてもらうって。アートディレクターの側からすると…かなり冒険って言いますか…。
菊地_ねぇ。そうですよね。
服部_写真の方が全然ね…想像つくことの方が多いけど…。絵はなぁ…。
菊地_撮影現場に我々も行けるから、一緒にそこで制作出来るって感じけど、イラストレーターが絵を描いてる時に横に座って…とは出来ないもんね(笑)
服部_まぁね(笑)そういうのもありかな(笑)
菊地_うんうん(笑)
服部_「ここで描いて!」(笑)

菊地_(笑)でもさ、絵の描き方っていうのが…こう…解釈の仕方ってあるじゃない?その…同じシチュエーションを確かに描いてきてるんだけど、「そこじゃなくて、ここだろう!」みたな。
服部_うん。
菊地_そこを上手く…説明的じゃなく、伝える方法をさ(笑)まず考えてよ!…って思ったりするじゃない(笑)
服部_あはは(笑)依頼の仕方が難しいよね。
菊地_うーん。
服部_良けりゃなんだっていいんだよ、本当は。
菊地_うん、まぁね。
服部_何だってね。出来上がって言ってたのとは全然違うんだけども、良けりゃさ。上がってきても、そういうことがあるよね。…毎回結構難しいって思うよね。自分で"あ、この人にこう発注すればこういうのを描いてくれるな~"って思ってると、やっぱり違うんだよね。
菊地_うんうん、そうですよね。
服部_頭のこう…回転が、っていうか…プロセスが人によって違うから。勿論、予想外のモノが出てきてすごく良かったこともあるけど…ってかそうしたいんだけど、難しいなぁ…。

菊地_でもある絵でさ、違う風に見せるとか扱ってみせるみたいなのってあるでしょう?
服部_ある絵だったらね、それは楽しいよ!
菊地_こっち側に持っていく(笑)こっちの世界に持っていく(笑)
服部_そう!(笑)自由にコレ使っていいっていうのはとても楽しいと思う。

菊地_服部さんはさぁ、学生の時、絵とか描いたりしてないの?
服部_ううん、描かない。
菊地_(笑)ちょうどさぁ…。
服部_嫌だった。
菊地_超コンペ全盛期だったでしょ?
服部_あぁそうか。気だるかった。ってか絵がね…。僕の時はね、日比野克彦さんがスターですね。僕が大学生の時の、スターは日比野さんが結構上で。グラフィックデザインやアートなんかで颯爽と…。日比野さんは若手スターだったけれど、当時イラストレーションは全盛期だから。湯村(湯村輝彦)さんとか勿論原田さんとか、水丸(安西水丸)さんとか。まぁ…そういう人たちがすごい活躍してて。毎年こんな分厚いイラストレーションの年鑑本が出たりとかさ。そんな、イラストレーションがめちゃめちゃ盛り上がった時代なんですけど。………僕は、元々最初は、イラストレーターになりたかったんだけれどね。

菊地_ふーん。
服部_その…中学生の頃とか。
菊地_"へたうま"で描けません?
服部_いや…うーん。…"へたうま"って分からない(笑)
菊地_(笑)

服部_…まぁ最初はあの…アイドルがいっぱいいたんだよね。和田誠・湯村輝彦・原田治…あらゆるジャンルでいたんだけど。和田さんの絵をすごい見てた訳。中学生くらいの時に。

菊地_うんうん。
服部_上手いなーって。中学生が(笑)似顔絵とか見てね。だいたいこう、映画スターの顔は…だいたい和田誠さんの絵で見て、後で写真で確認する、っていう(笑)
会場_(笑)
菊地_ふふふ(笑)
服部_ミュージシャンとか絵と写真で見比べて「なるほど!」って(笑)
菊地_(笑)
会場_(笑)
服部_和田さんの絵で知ってるのに、写真見て後で分かったりね(笑)
菊地_おー(笑)
服部_それで和田さんの絵があまりにも上手くて…無理だと思って。
菊地_あぁ。

服部_あんなに上手いなら…「もうこの人がいたら、いらないじゃん!」って感じがしちゃって(笑)その後に湯村さんの、へたうまで…。湯村さんは本当に大ファンなんだけど。まぁ別に僕がいいってことだけだからじゃないんだけど…それでもしかしたら、なんかなれるかなぁって思ったりした、っていう感じがあったんだけど。そう思ったことを、原田さんにパレットクラブで話をしたら(笑)、原田さんは何かニヤニヤして「あー、僕は逆ですけどね(笑)」って言ってて(笑)
菊地_あははは(笑)
会場_(笑)

服部_で、湯村輝彦で…これは敵わないと。当時の湯村さんってね…そのすごさって、多分…ちょっと僕にも分かんない。僕よりもう少し前の世代の人だから。僕はもうちょっと湯村さんの後の世代で。それぐらい湯村さんの…まぁ、センスだよね。ひたすらセンスがいいんだよ、湯村さんは。それが衝撃だったって。原田さんがそういう感じのものは描かないから…
菊地_分かる分かる(笑)
会場_(笑)
服部_そうそう(笑)そっちの方が正しいな~って思う瞬間でしたね。
菊地_うん。うん。
服部_最近ちょっと、絵、描こうかなぁって思ったりしてるんだけど(笑)
菊地_ふふふ(笑)

服部_デザイナー的な…。あ、だから絵をイラストレーターで描くんじゃなくて、パソコンで線引くのと自分で線引くのは別に一緒っていうか…自分で描いたものを一つの素材としてデザインする、ぐらいなことは…

菊地_うん。
服部_まぁ、いいかなって…これからは。…っていうか描くのが面倒くさいんだよね(笑)
菊地_(笑)うんうん、確かに。
服部_あはは(笑)
菊地_僕もやっぱり絵の具で描いてますよ。…よく倒すんですよ、いろんなものを(笑)綺麗に作っても、出来上がった瞬間に何か倒したりするタイプ(笑)
服部_あはは(笑)
会場_(笑)


菊地_いやぁデザインした方がいいですよ、イラストしてる人は。
服部_絶対いい。だから、ブックデザインの仕事を自分ひとりで出来るっていう状態になった方がいいよね。
菊地_うん。賛成。絶対そう思うな。

服部_広告とかそういうのが出来なくてもね。文字が入って絵が入ってって…ブックデザインがね。原田さんのこういうの(『夏の終りにオフサイド』など)とは違いますけど。自分の絵を使った…本の装丁ぐらいは…。でもそれはさ…デザインの技術的なこともあるけど、ジャッジも必要なんだよね。

菊地_そうですね。
服部_作品として、どういう絵がどういう風にどういう本の表紙になったら、それがそれで商品として成り立つかの。そのジャッジ、そこですかね。
菊地_うん。
服部_むしろね。文字をどう使うか、とかよりね。
菊地_そうですね。そっちの方が絶対楽しいと思うんだよね。
服部_うん。
菊地_絵だけやっちゃうと、絵のことを考えちゃうけど…ブックデザインって別にデザインのことを考えてないじゃないですか?全体的な本のことを考えてる。
服部_うん。

菊地_この内容でこれだったらこれがいいな、とか。こういうタイトルだったらこれがカッコいいなとか。本がどうあるべきかって所からデザインを考えるから…。絵もそんな気がする。イラストレーションもそんな気がする。

服部_うんうん。
菊地_…作家っぽい人が多いんだよね、最近ね。
服部_作家?

菊地_作家っぽいって言うか…"余計な値"が大事みたいな…。そういうイラストレーターが多いから…。何かそれちょっと退屈だなと思うことも多いな…。特に若手でイラストレーター志望で始めたけど、ちょっと脚光を浴びると何か…展覧会屋さん、みたいな。それって自分の作品を"デザインに使わせてあげる"みたな…感じの関係になっちゃうと、やっぱ結構退屈だなーって。毎週毎週仕事していて退屈だなーと思いますもんね、そうするとね。
僕だとやっぱり、囲碁やってるみたいな感じになると楽しいから。こう出した物に対して…あ、そう来るならこう!思ったことをそこに入れる!…な、関係性が出来る人だと一緒にやっててすごく楽しいなぁ…。

服部_そうだね。やっぱり僕…自分のテリトリーっていうか、そういうのをこだわると…難しいね。でも、まぁ何やってもその人のね…何描いても原田さんみたいな感じになるように…。

菊地_うん、実はそうなんだよね。


菊地_グッズをやるとしたらさ"KAZUNARI GOODS"とかつける?(笑)
会場_(笑)
服部_(笑)"KAZUNARI'S MOTHER GOOSE"とか?(笑)どうだろうね?(笑)
菊地_響きの問題かな?
服部_"KAZUNARI"だよ?
菊地_"OSAMU ATSUKI GOODS"!
服部_"ATSUKI"はねぇ~(笑)
会場_(笑)
菊地_アニメの声優すぎるのかな(笑)
服部_あぁ…でもそれは…。原田さん的にはどうなんだろうな…。
菊地_どういう感じかなと思って、ちょっと不思議だった。
服部_"OSAMU GOODS"はね…
菊地_"OSAMU"って響きはアリだなぁ…
服部_"OSAMU"って名前がすごくポピュラーな名前だから…
菊地_うん、あっそうか。
服部_太郎的な。
菊地_うん。
服部_だから、出来るんじゃない?"KAZUNARI GOODS"は…(笑)
菊地_…"KAZUNARI GOODS"ちょっとイメージ出来て来た(笑)"KAZUNARI"も一般的だよね?
服部_売れないよ!(笑)売れない!(笑)
菊地_あははは(笑)
会場_(笑)
菊地_"KAZU"(笑)
服部_"KAZU"?(笑)それは…(笑)
菊地_あははは(笑)恥ずかしい?(笑)
服部_"OSAMU GOODS"か…
菊地_勿論時代を感じるのは分かるんだけど…
服部_そうだね。OSAMU GOODSのファンクラブとかあって、会報とかあったりする訳。で、原田さん、写真に載って出てたりとかさ。…原田さん、すごいハンサムで。
菊地_うん。
服部_『anan』なんかでいろいろレポートでちょっと顔出ししたりとか。意外に自分が出るのも嫌いじゃなかったのかな?
菊地_嫌いじゃないと思うね(笑)
会場_(笑)
菊地_その当時のデザイナーとかさ、イラストレーターって、そういう、こう…見られる…
服部_芸能人ではないれど…。でも嫌う人そうな感じの人でしょ、原田さんって。
菊地_まぁ、そういう感じはあるよね。
服部_そんなに嫌じゃなかったのかな?その辺がこう…謎めいてますよね。
菊地_うん。

 

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