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ALETTECLUB特別企画 原田治のイラストレーション展

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服部_何か他にありますか?…はい。

会場_原田さんの授業の時に、タブロー(※1)っていうイラストレーションとは違うテーマでやっていて…。そういう普通に絵を描くより、文字を入れて描いたりした方を好んでいた気がしていて、それをさっきの話と加味して何か…

服部_まぁ、やっぱり作品としての自分の…タブローというか、人に何か伝えるとかあるいは何か目的があってとか、テーマが決まってて、描くイラストレーションが全然違う、っていう意識が…当然と言えば当然なんだけど。でも、原田さん世代、すごい強いよね。

菊地_うん、強いよね。
服部_水丸さんもめちゃめちゃそのさ、うるさいっていうか。…最近何か…そんなことどうでもいいんじゃない?って感じもある。
菊地_ある。
服部_別に面白けりゃ…どこでどれ使ってもいい、みたいな。
菊地_そういうのはあるね。

服部_使う側の問題…もすごくあるよね、本当はね。全然イラストレーションを、イラストレーターとしてはそういう意識で描いてない絵なんだけど、アートディレクターが上手いこと見つけてきて、それをこんな場所でこんな風に使ったらめちゃめちゃ有名になった、みたいなことも有り得るので…。でもまぁ、特に原田さん世代、80年代の本当にイラストレーションがすごくこう…色んな場所で広告でも何でも、イラストレーションがすごい華やかで…イラストレーターの名前がすごい売れたりする時代と、イラストレーターの人達はだいたいこう…そんな意識がすごいですよね。職業としてのイラストレーターっていうものに対するプロ意識がある。

菊地_タブロー的な絵画って…。たまに何か展示をしなきゃいけない時があるんですけど…美術館的な場所に。グラフィックデザインって元々…ぱっと見すぐ分かる方が偉いから。スピーディに伝わる方が偉いから、じっくり見る価値あんまりないんですよ(笑)こう…じーっと見て…それ、いつもちょっと困ることがあるんですね(笑)
タブロー的な絵っていうのは、グラフィックデザインの中に乗っかってきた時に、見るのに時間がかかっちゃう。なんか、モノな感じがするんですよね。そういう意味で僕は違うな…と思うし、やっぱりイラストレーションは、ぱっと見で画面にくる方が強いな…と思いますけどね。もちろん使うシチュエーションにもよるしね、イメージにもよるんだろうけど…。
だからあんまりマチエール(※2)的なモノっていうのは、もちろん全部は悪いことではもちろんないんだけど、基本的には…なかなか見るのに時間がかかるから…形態が強いものの方がイラストレーションとしては向いているなと思うのが、多いですよね。ただ、服部さんが言ったように絵画的なポンッときたら、すごい新鮮なイメージがあるから…まぁ、一概には言えないですけどね。

(※1)タブロー…出来上がった絵画の意味で、作者の思想や構想が画面に組み立てられ完成化されたものを指す
(※2)マチエール…作品表面の肌合い。作品の材質がもらたす効果。

服部_リアルイラストレーションって最近流行らないじゃない?
菊地_うん?最近?流行ってる?
服部_流行らない。
菊地_え、そんなことないんじゃない、最近ふつふつと。
服部_あ、そうなの?
菊地_あ、ちょっといい人、紹介します。
服部_(笑)かなりいいの?
菊地_かなりいいの!
服部_リアルイラストレーションって、昔はね、結構…一時さ…。
菊地_スーパーリアルな。
服部_うん。…そういうカテゴリーがあったというか、何人ものすごいイラストレーションのスタジオと作品があって。あれ、今、結構新鮮だなぁと思ってさ…。
菊地_エアブラシ!
服部_買いましたよ!
菊地_僕、持ってる(笑)
服部_あ、持ってるの?
菊地_何か、エアブラシで筆の代わりに。イラストの仕事がきた時に、リアルな絵を描いたんですよ(笑)
服部_今ならフォトショップでいろんなことが出来るけど?
菊地_そうだよね(笑)いや、でも敢えてエアブラシ!(笑)
服部_エアブラシね(笑)フォトショップの方が結構…
菊地_いろいろ出来る?
服部_うん、ほぼ。描いてみると。
菊地_写真撮って、こう…フィルター掛けたり(笑)
服部_いやいやいや(笑)

菊地_他に何かありますか?
会場_原田先生の絵を見て「これも、原田先生が描いてるんだな」って何となく分かるんですけど、それをちょっとデザイナーの方からちょっと言語化して…
菊地_何が共通項か?
会場_はい。
菊地_何で原田さんが描いたか分かるか。
服部_あれとこれが同じ人、みたいなね。
菊地_原田治展を見てるからなぁ…
会場_(笑)
服部_(笑)
菊地_(笑)いきなり見せられたら分かんないかもなぁ?(後ろの東山千栄子とコリン・ウィルソン辺りの絵を見て)【4〜7】リアルだなぁ…
服部_これはね(『築地明石町界隈』の絵を指して)【8】これとかはね…
菊地_ちょっと分かんないよね。

服部_ね。こういうさ、三頭身(『話の特集』の絵を指して)【9】みたいな…あるじゃない。OSAMU GOODSが代表的だと思うんだけど。これとこういう【10】(『アメリカ短編作家シリーズ』の絵を指して)、八頭身的な…。でも何かあるよね、共通するものが。

菊地_ま、“意識”かなぁ。
服部_便利な言葉だね(笑)
会場_(笑)
菊地_(笑)
服部_“意識”だね!(笑)
菊地_あぁ、これ“意識”ですよ!(笑)ふふふ(笑)
服部_ははは(笑)
会場_(笑)
菊地_後“距離感”かなぁ。
菊地_対象との距離感。
服部_あぁ、距離感かもね…
菊地_もうちょっとさ、しつこく描いちゃう人、いるじゃん?こう…しつこく見ちゃう人とか。もうちょっと対象に、モチーフに対して入り込んでくる。

服部_あぁ、でも距離感かもね。カメラマンってさ、やっぱり選ぶレンズが、全てっていうか…距離感とか、ワイド目で撮りたがる人と、ロングで撮りたがる…。まぁもうちょっと細かいんだけど、分かりやすく言うとね。それ、あるじゃん。「このレンズじゃないんだけどなぁ…」って思う時、あるよね?

菊地_あるある。
服部_後もうちょっとこう…斜め上、2cmぐらい…とかさ。
菊地_あ、でも逆に僕は言うね。どちらかと言うと。「こうくるんだったら、ちょっと広角の方がいいですよね?」って。
服部_えぇ「やめて!やめて!」みたいな?
菊地_「やめて!やめて!」って言って?標準で標準で。
服部_あぁ。そうそう。でもまぁ、あるじゃん。具体的に距離感とかアングル…所謂アングル…目線だけじゃないけど、物の捉えるアングル、みたいなのはあるよね。
菊地_うん。
服部_何となく。…答えになったぞ(笑)
菊地_ははは(笑)
会場_(笑)
服部_影響されてる50年代的アメリカな感じと日本の海外な感じが融合して、世界感がすごく素敵な感じになってるよね。
菊地_何かアメリカ文化に対しても、日本画的なものに対してもやっぱ、距離感が似てる感じがする。
服部_うん。
会場_それは距離が近いんですか?
菊地_いや、何か…透過な感じがするんだよね。すっごい好きで“アメリカンだぜ!”って感じにならない。(笑)
会場_(笑)
服部_ちょっと冷めてる感じがあるよね?
菊地_自分がないっていうのは、自分の意思を出さないってことだから。
会場_あぁ。自分がないっていうのは大事なんですか?
菊地_別にいいと思うよ。

服部_それはあの…本人は気づいてないっていうのはあると思うんですよね。そういうのはね。身に付いたもの。長年で染み付いてるから、よくて…本人は気づいてなくて周りはなんとなくそれを察知して。いいねーって原田さんがいつもいいねーって言ってて、いけそうな感じがするのね。菊地くんの色彩と違って“企て感”がないの。

会場_(笑)
菊地_“企て感”が未だになってもでちゃう(笑)
服部_“企て感”が色彩にある!(笑)
菊地_これ、褒められてるんですよね?(笑)
会場_(笑)
服部_そうですよ(笑)
菊地_あはは(笑)服部さんが言うからさ…(笑)“菊地さん、企ててる”ってすぐ噂になっちゃうから!ホント、気をつけて欲しい!(笑)
服部_(笑)
会場_(笑)

PORTRAIT『EXTRAORDINARY LITTLE DOG』(1981年)より。 【4】東山千栄子 【5】コリン・ウィルソン 【6】三遊亭円生 【7】久保田万太郎。描く線、一本一本が生きているようなリアルなイラストレーション。求めに応じて様々なスタイルで描き分けていた頃の作品。

『話の特集』に掲載した「築地明石町界隈」の原画(1980年)。OSAMU GOODSしか知らない人であれば、同じ人が描いたものだとは分からないかもしれない。

『話の特集』表紙。左…「撮影所にて」1977年。右…「火事」1978年。服部さん曰く三頭身タイプのイラスト。クスッと笑わせるシニカルなユーモアが楽しい作品。

1981年「アメリカ短編作家シリーズ」掲載雑誌不明。服部さん曰く八頭身タイプのイラスト。三頭身タイプのイラストと見比べると、描き方は全く異なるのに、対象となるものの距離感が似ている気がするというお話が。描き手のある種の思入れが排除された、作品を少し突き放したような感じ…とも言えるかもしれない。

服部_他に何かありますか?…僕はあまりにも原田さんがちょっと特別な存在だったんで…
菊地_あんまり感じないですよね?服部さんから原田さんの印象、ないもん。話聞いてるから、まぁちょっと知ってるっていう…
服部_…10代の頃、あまりにも見てたので、上手く喋れない感じがしましたけどね…。逆に。

服部_あれ【11】は初期は切り込みの入った目なんですよね。OSAMU GOODSの目がね。
菊地_目がね。
服部_途中から黒目になる。それがどっちがいいとかじゃないんだけど、僕はその…切り込みが入ったのを、必死に模写してたから…
菊地_うん。
服部_中坊の時に。真似して描いてたから、その思入れが…。「あぁ、目に切り込みを入れると何か…可愛くなるぞ!」みたいな感じで(笑)
会場_(笑)
服部_…描いてた中学生時代の記憶があるから、こっちに非常にどうしても思入れがある。

服部_何かありますか?
菊地_じゃぁ今日の番組は…って深夜ラジオっぽくなってる(笑)
会場_(笑)
服部_出だしが…(笑)つい、思い出話っぽくなっちゃうでしょ?どうしても。
菊地_思い出話…聞きたい!
会場_(笑)

パイをスライスしたような形の目をスライスドアイと言う。OSAMU GOODSの初期の作品はこの形をしている。このカットは『BEDTIME STORIES』(1984年)の安西水丸さん作「名探偵ハンプティ・ダンプティ登場 シュガー・ドーナツ殺人事件」より。

 

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