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OSAMU GOODS TRIBUTE TALK SESSION   Report Vol.2

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原田ーーー石井さんがいろいろ考えてくれてね、最初は付けまつ毛屋さん、コージー本舗で化粧品のおまけ代わりに化粧ポーチのようなものを作ったんです。抽選で当たるグッズね。そこに書いたのはポニーテールの女の子の顔でした。それが出来て、じゃあ商品化してゆこうかって」

伊藤ーーー「(展示作品のジルのイラストレーションを指して)あの娘(こ)ですか??」

原田ーーー「うん、だいたいそうかな」

石井ーーー「(描き方や画風の違うジルのイラストレーション数種を見渡して)あ、これかな、いや、こっちの方が近いかな?? これ全部微妙にあれですよね、年齢も違いますよね。」

原田ーーー「(笑 割といい加減に描いていたからね。ははは。えーとね、目のところに割れ目が入ってるのはパイカットアイ、スライスダイクンって言って、古いミッキーマウスの目と一緒だね。ウォルト・ディズニーが描いた時代。戦前ですね。それで、切れ目をとって普通の楕円にしちゃったのは、あの、ハンナ・バーバラのね、50年代60年代に人気を博したアメリカのアニメーションのキャラクターの目が楕円だったから、いいなと思って取り入れたのです。」

伊藤ーーー「へぇ、なるほど。」

原田ーーー「種明かしついでに言うと、目の楕円は全て楕円定規で描いてました。」

伊藤・会場ーーー「ほ~~。そうだったのですねぇ。」

原田ーーー「最初はね、手描きで描いていましたが、左目描いて右目を描くと大きさが違っちゃってね(笑 それで又修正しようとして左目を描くと、大きさが変わっちゃってね(笑」

伊藤・石井・会場ーーー「(大笑)」

原田ーーー「製図用のね、楕円定規にも様々な型があってね、それを全部揃えてました。それで描くとすぐに出来ちゃった。一番難しいのですよね、目が。どこに置くかによっても印象が変わっちゃう。」

伊藤ーーー「ちょっと動かすだけで変わってしまいますよね。」

原田ーーー「2、3ミリ離すだけでね、変わっちゃう。」

伊藤ーーー「目だけ、ですよね、楕円定規を使われたのは。」

原田ーーー「そう、他は使ってません。」

伊藤ーーー「でもよく分かる気がします。ぼくはコンピューターで描いてますが、そこを決めるのが難しいです。」

原田ーーー「あ、うんうん、伊藤さんがやっているモジュールって考え方でしょう、あれね。同じなんですね、楕円定規で描くというのは。」

伊藤ーーー「そうなんです。でも、それを手描きでやるっていうのは本当に難しそう。単純な絵ほど、大変な作業なんですよね。」

原田ーーー「ぼくの原画は殆どホワイトの修正だらけですね。後で直そうと思って描く。勢いが大切ですね。あんまり慎重に描くと勢いがなくなっちゃう。思いっきり描いてはみ出たりしたくらいの絵の方が良くって、後で修正をします。デザインの仕事でレタリングもやってるし、多摩美のグラフィックデザイン科出身ですからね(笑」

伊藤ーーー「そう考えると、絵描きの発想と言うよりも、デザイナーの発想ですよね。」

原田ーーー「そうですね、職人的な発想ですね。」

伊藤ーーー「最終的に印刷などできれいな仕上がりなれば良い、ということですよね」

原田ーーー「はい。イラストレーションも殆ど色指定です。絵描きさんのように一生懸命描いても、印刷になれば4色分解されて、思ったような色にならない。色が出ない。それは悔しいので、最初から印刷の色指定にする。本当に職人の仕事ですね。」

伊藤ーーー「成る程、よく分かります。」

原田ーーー「オサムグッズやって面白かったのは、普通のグラフィックデザインの仕事やエディトリアルデザイン、平面の仕事は印刷の4色分解の限界があるけれど、プラスチックとか素材が変わると、使える色が違うのです。染色の色もある。プラスチックはプラスチックの素材の色から考えなくちゃいけない。そこは印刷では出せない色がたくさんあるので、そういう意味でもグッズをやって楽しかったのはありますね。うん、色ですね。」

伊藤ーーー「ということは、それぞれの素材別業界にもカラーチャートがあるのですね?」

原田ーーー「そう、全部工場にね、カラーチャートが用意されていました。」

伊藤ーーー「全てその素材別に合わせて、出る色も計算して…」

原田ーーー「そうですね、元々の素材から細かく色を考えます。」

伊藤ーーー「パントーンはありましたか?」

原田ーーー「パントーンは最初から使ってましたね。」

伊藤ーーー「このパントーンの色に近付けて欲しい、とリクエストされたり…」

原田ーーー「はい、そういう作業もありましたね。でも、そう言うと殆ど出来ないですね。無理って言われちゃう。それで、元々パントーンのオーバーレイって言うのは…(進行役の石井さんを振り返って)良いのかな、専門的な話が続いてますが(笑」

石井ーーー「いえいえ、どうぞどうぞ。」

原田ーーー「オーバーレイってカラーシートの裏に糊が付いていて、カッターとかハサミで切って、紙に貼り付けて使います。安西水丸さんが主にやっていた手法ですが、ぼくはもっと前からやっていました。パントーンの色がとっても好きでしたが、それも印刷すると、あの発色は出ないですね。ある時、パントーンのオーバーレイを使ったイラストレーションを描いたことがあって、えーと、雑誌のアンアンだったかな、オリーブだったかな、全然色が出なくってね、それでグラビア印刷だったかな、アートディレクターの新谷雅弘さんがパントーンのその色を見ながら、近付けるために全部色指定してくれたのです。出ないからね。それで、パントーンを使うのを止めたのです。」

伊藤ーーー「大変ですからね。」

原田ーーー「それから原画は全てモノクロで、色指定ですね。でも、こんな話は面白くないかな?(笑」

伊藤ーーー「いえいえ、ぼくは一人で凄く面白いなと楽しんでいます(笑」

石井・会場ーーー「(爆笑)」

伊藤ーーー「やはり工程に合わせて、描くぞという気負いよりも計算しながら作り上げてゆくという…」

原田ーーー「そうですね、出来る限り無理はしないように。で、グッズを見て貰えば分かると思うのだけど、色数を多くすればする程、原価が高くなっちゃうので、色数を抑えるようにしますね。せいぜい3~4色限定くらいで、特色で色を重ね合わせてゆく工程もその辺りを考えてね。それが又デザイナーだとそういうのが楽しいでしょ?」

伊藤ーーー「そうですね、制約のある中で張り切って、面白いものを作ってやるぞと余計に燃えて…」

原田ーーー「意外な面白さが出てきたりしてね。だからデザインが殆ど趣味みたいな感じになってきましたね。で、オサムグッズという名前になったのはね、あの頃、イラストレーターの仕事をやっていると、本当にパクられちゃうのですね、精魂込めて描いたものを、どっかの人がそっくりにパクっちゃう。で、商品を作る時にそれはマズいですから、著作権をどういう風にするかって考えてね。現在のようにイラストレーションが盗用されたって裁判起こすなんて例もありませんでしたからね、日本はそれがいい加減だった。どこでも普通に盗用が当然のように行われていて、もう、諦めていた感じだったのです。」

伊藤ーーー「そうだったのですね…」

原田ーーー「ね、でも、ブランドを立ち上げるわけですから、その、偽物が出たりするのを防ぐためにどうしたら良いのかって考えていたら、弁護士に商品化権を取りなさいってアドバイスを貰えたのです。全部商品にするためですから、グッズですから商品なので、商標を取らなくちゃならない。ブランド、ですね。オサムグッズというロゴと、意匠登録っていう作業で、キャラクターの絵を一通り登録するのです。特許、ですね。特許庁に出願するわけです。」

伊藤ーーー「成る程、特許庁ですね。それは今も同じですね。」

原田ーーー「はい。それで、プラスチックの物、布物、紙物っていう作る物によって、何類何類って20~30種類くらい申請して、バッティングしないように配慮しながら、商標登録を行ったのです。そして商品化権というものを取っておくと、パクられたときに、こっちは商品化権を取っているぞ、という裁判が出来るのです。不正競争防止法に基づく損害賠償と製造販売差し止めということが可能になります。まぁそれは皆コージー本舗さんがやるんだけど。それで裁判の中で示談となったりで…」

伊藤ーーー「結構そんな例があったのですか?」

原田ーーー「しょっちゅうありましたね。だから最近ニュースで著作権や商品化権の話が出て来ると、凄く身近に感じたりしてね。あのオリンピックのロゴの件でもね、気になったりしてね(笑 」

伊藤・石井ーーー「(苦笑)」

原田ーーー「それから商標登録の時に、名前をどうするかってなって、いろんな物を作るのだから、"なんとかグッズ"が良いだろうとは見当を付けていて、先に◯◯◯グッズというのは決めておいて、頭に付ける文字はいろんな種類を考えて、なるべく英語で行こうということも決めておいて、でも、どれをやっても(特許庁には)通らないのですね。これが。殆ど登録されているからね、頭の文字が。」

石井ーーー「これが行けると思っても、あれがダメだなんて感じで。」

原田ーーー「そうそう、何類も取らなくちゃならないから。それで特許を取るのに200~300万円かかるのですね、だから、もう仕方がないので、固有名詞なら大丈夫だろうと考えて、それならもうぼくの名前で取れるだろうと思ったら、すぐに取れちゃった(笑」

伊藤ーーー「そうだったのですね。」

原田ーーー「それで、自分の名前が付いていると、コピーライトの代わりにもなる。そういう意味も入れてね。だから、本当は恥ずかしい(笑」

伊藤・石井・会場ーーー「(爆笑)」

原田ーーー「他人の名前は使うのも変だしね(笑」

伊藤ーーー「合理的ですよね、コピーライトまで兼ね備えているっていう…」

原田ーーー「そうですね、そうすると裁判になったときにね、有利だしね。それと著作権というのは著作物に対して発生するものだから、オサムグッズを最初に作ったときに、最初まず、オサムグッズのキャラクターを決めて、マザーグースを題材にして…。マザーグースは版権がないですからね。随分前の伝承話ですから、詠み人知らずですから、作者がいないし、自由に使っていい。でも、それをブランド化することは出来ないけれど。オサムグッズの商標登録を取った後に、テーマをマザーグースにして、マザーグースの詩の中から様々に引用して。犬とか猫とかは名前はないのですが、その中から引用してゆくと、ただDOGとしか書いていないから…、まぁ、取り敢えず、それを選んで、絵本を作る。一番最初にやったことですね。絵本の中で全てのキャラクターを解説することが出来ると、そこから著作権が生まれるわけです。著作物ですからね。そのために絵本を出版したのです。」

石井ーーー「今回の展覧会にも展示してありますよね。一番最初の本。銀色のアレ(※1)でしたよね。スマートで結構描き込んであるイラストレーション。」

※1 昭和51年11月1日初版発行の『オサムズ マザーグース』の事。後に赤・黄色バージョンが出版された。

伊藤ーーー「ある意味マニュアルブックのようなもの、ですよね。」

原田ーーー「そうですね。それで初めて商品のサンプルをいっぱい作って、昔の赤坂のヒルトンホテルでね、あの、ビートルズ来日の時に彼らが宿泊したホテルで、展示会を行ったのです。そういうのを石井さんが全て企画してくれたのです。」

石井ーーー「そう、紛れ込ませてね(笑 何とか既成事実を作ろうとしてね(笑」

原田ーーー「石井さんは参謀担当、みたいな感じでね(笑」

伊藤ーーー「今で言うプロデューサー、ですね。」

原田ーーー「そうですね。」

伊藤ーーー「暗躍していたわけですね(笑」

石井ーーー「いえいえ、そんな(笑」

原田ーーー「展示会に出した最初のグッズは殆どサンプルだったのです、商品化されたのは殆どないですよね。」

石井ーーー「そうですねぇ。」

原田ーーー「今回のビームスの企画展でオサムグッズの展示協力をしてくれたトムズボックスの土井さんも、それらを探しているらしいのですが、もう残っていないようで。」

伊藤ーーー「じゃぁ、もう、本当のサンプルですよね。貴重な。」

石井ーーー「それでも体裁整えるために何点も作らなきゃいけなかった。」

伊藤ーーー「印刷で言うところの色校、みたいな感じですね。」

原田ーーー「そうですね。最初の立ち上がりの時のデザインやディレクターは奥村靫正くんに手伝ってもらいました。1年くらいかな。でも本格的な商品化には至らなかったので、次からはぼくがやりました。ぼくがやります、って観念した感じでね(笑 でも最初の1年間くらいは奥村くんと一緒にね。」

伊藤ーーー「奥村さんですからね、凄いですね。」

石井ーーー「もう、原田さんと奥村さんの二大巨匠ですからね。刺激的ですよ。二大巨匠の締め切りですからね(笑 もう、駆け込みみたいな、ね(笑 1年間でサンプルが何点出来ただろう…(笑 」

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