人気イラストレーターの絵を付けたグッズというのは、伝統があります。古くは大正時代、竹久夢二の時代から存在しています。夢二グッズということで、当館(弥生美術館・竹久夢二美術館)のミュージアムショップでも販売しております(笑)。竹久夢二の絵を付けたグッズということになりますが、それが当時の少女たちに大変に好まれていました。当代一流のイラストレーターの絵が付くということで、小さなポチ袋であっても夢のある特別な商品となります。
大正時代の夢二をはじめとしまして、当館に所縁のある高畠華宵の、華宵便箋、レターセットですね、そして中原淳一の淳一グッズ、松本かつぢのかつぢグッズ、そして戦後になりますと、内藤ルネのルネグッズ、水森亜土の亜土グッズ…亜土ちゃんのグッズは今でもとっても人気がありますよね。あと、田村セツコのセツコグッズ…という形で、イラストレーターの名前を付けた「何々グッズ」という伝統がずっと続いているのです。原田治さんのオサムグッズはそれに連なるものである、ということを私は確信しており、この度、当館にて40周年記念の展覧会を開催させていただきました。
オサムグッズを観るときに、そこに原田治という作家の強い個性が出ている、ということを皆さまも感じ取っていただけると幸いです。そして、アーティストということではなく、デザイナーとしての原田治、そういう目も必要である、ということですね。職人気質と言いましょうか、原田治さんはご自身でも「ぼくは職人気質だから」とおっしゃっておられます。デザインも行える能力が優れていないと、よいグッズは生まれて来ないんだなということですね。デザイナーとしての目とアーティストの目、その二つを持ってバランスのとれたデザインをしている、というのが、オサムグッズなのですね。
会場ところ狭しと並んでいるオサムグッズのキャラクターですが、12種類ございます。これらは全てマザーグースに由来したものになります。これはこの度の展覧会で私も初めて知りました。何となく可愛いなぁと今まで思っていましたが、やはりバックグラウンドがあったのだなぁと改めて感じております。こちらに(キャラクターの線画が並ぶ壁面を指差して【3】)ありますキャラクターにはマザーグースの英語の詩を付けてあります。
あちらのスクールバッグ(トートバックが並ぶ壁面を指差して【4】)、あれは1980年代の女子高生は皆んな持っていたんじゃないか、と思います。学生鞄の持ち手のところに引っ掛けるようにして持ち歩くわけで、お弁当箱なんて入れたらガタガタと音がなっちゃうというようなシンプルな作りですから、それは「見せ」バッグだったわけですね。そして裏面に英語の詩が書いてありました。当時は英語が格好良いなぁくらいしか感じておりませんでしたし、特に意識はしていなかったのですが、それらは全てマザーグースの一節になっていたのです。
例えばハンプティダンプティが塀から落っこっちゃった、という詩が有名ですが「覆水盆に返らず」ということわざを表しています。ジャックとジルについてもマザーグースの一節からとっているそうです。
後編に続く。