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OSAMUGOODS NEWS

2016年8月14日(土)に弥生美術館学芸員内田静枝さんによる『学芸員によるギャラリートーク』が開催されました。『オサムグッズの原田治展』の見処を少女文化に関する目線から解説。そのイベントの模様を前編・後編でレポートします。

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『少女時代によろしく』、『水森亜土』、『女學生手帖』など、著書多数な、弥生美術館学芸員内田静枝さん。今回の『オサムグッズの原田治展』の企画を行い、展示商品のセレクトや設営、期間中の様々な取材受付も担当されました。オサムグッズを集めた少女時代の経験談と、大正期から連なるイラストレーターのグッズの歴史を俯瞰されたギャラリートークは来場者の皆さんにとっても興味深いお話だったのではないでしょうか。弥生美術館の一階に展示されたオサムグッズを眺めながらの説明はとても分かりやすく、改めてその魅力を掘り起こす50分間となりました。

私が強調したいのはオサムグッズは懐かしグッズではない、ということです。

再び大人の目でオサムグッズを見ますと「なんて格好良いんだろ」「なんて素晴らしいデザインなんだろう」ということに気がつきます。中高生のときには見えなかったことなどを、こうして再び相見えることによって、オサムグッズ40周年記念の展覧会で皆様にも気づいていただければと思います。

ミスタードーナツの景品は有名ですが、実は正確にはオサムグッズではないのです。私も原田治さんのイラストレーションが施された景品が欲しくて、どれほどドーナツを食べたことでしょう。しかし、ドーナツのおまけはオサムグッズではありません。

1984年からミスタードーナツの景品が始まりましたので、それによって日本全国の人が原田治さんによる可愛いキャラクターグッズを知り、それが欲しくてドーナツを食べたわけですが、本当のオサムグッズ、それは(株)コージー本舗が出していたもので、登録商標もしています。

原田治との共同作業でコージー本舗が著作権管理を行い、続けて社内でダスティーミラー【1】というオサムグッズを販売するための小会社を設立し全国展開していたのです。初期のオサムグッズをご覧になると、クレジットがあります。例えばここに(展示コーナーを指差して)タグが出ていますけれど、「OSAMU GOODS NEWYORK-TOKYO」とあるんですね、このタグが付いているものが本物のオサムグッズなのです。

オサムグッズは1980年代後半には年商20億円年間販売個数500万個を誇ったそうです。あまりに数が大き過ぎて、それがどれほどのことなのか、想像が難しいですけれど、とにかく、大ヒットだったわけです。

展示されたグッズや原画、資料類の説明パネルは、原田治さんに提供された資料などを元に学芸員内田さんが作成。

このダスティーミラー製のオサムグッズの特徴は、原田治さんがイラストレーションを描き、デザインも行っていることです。イラストレーションはまず線画、モノクロで描かれています(壁面の展示を指差して【2】)。これを元にグッズを作ろうと皆さんも想像してみてください。「何を作ろうかな、Tシャツを作ろうかな、バッヂを作ろうかな、ノートが良いかな、マグカップを作ろうかな」などなどいろんな考えが浮かぶと思います。

画像左が版下と言われる下絵、 画像右が版下を元にデザインされたバンダナ。展覧会では下絵とグッズが見比べ出来る様に展示されていました。

貴重なラフスケッチ。殆ど最初に鮮明なデザインのイメージが出来上がっています。原田治さんのデザイン力を物語るグッズですね。


その人によって例えば「ジルちゃんの髪の毛の色は何色にしようかな、猫ちゃんは何色にしようかな、背景は何色にしようかな、そして素材はどうしようかな、Tシャツならゆったりが良いかな、締まっているのが良いかな」などなどたくさんの選択肢が出来てゆくわけです。

同じキャラクターを使ってグッズを作るとなっても、どんなアイテムを作るかどんな表現をするか、どんなレイアウトをするのか、そこにデザイナーの個性が反映されてゆきます。原田治さんが自らイラストレーションを描き、アイテムをどうするかを決定して、配色も決めて、レイアウトも決める。全て原田治さんが作業を行ったグッズが、オサムグッズなのです。それがダスティミラー製のオサムグッズです。1つのイラストレーションを使っても、そこにたくさんの選択肢がある、どういう選択をするかによって、完成形がやはり違って来ます。この選択の部分に原田治の作家性があると私は思います。

皆さま、どうぞグッズをご覧ください。よくこんな格好良いデザインの文房具が1980年代にあったのだなぁと、今更ながらに感じます。やはりそこに原田治さんの個性があるのですね。

オサムグッズは生活用品から文具など、多岐に渡りデザイン展開していました。発想力の広がりや深さを俯瞰出来る展覧会でした。

 

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