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PALETTECLUB特別企画 原田治のイラストレーション展

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トークショー出演者プロフィール紹介。画像左より

赤勘兵衛さん
自然をテーマに描く事が多い、広告美術の世界では毎日広告賞、フジサンケイ広告賞、カンヌ国際広告賞銅賞、CMフイルム銀賞、ACC賞.ADC賞、ニューヨークADC銀賞、電通賞、読売広告大賞など。

ヒロ杉山さん(エンライトメント)
ファインアートの世界で国内外の展覧会で作品を発表する一方、フリーペーパーやアートブックの出版、広告や雑誌、CDジャケットなどでも独創的なグラフィックを発表し続けている。

上田三根子さん
明るくポップな画風と、お洒落なセンスは人気が高く広告・雑誌の仕事に加え、エッセイ、コメンテーターと幅広い分野で活躍。 LION「キレイキレイ」シリーズ、プレイステーション用ゲーム「ぼくのなつやすみ」シリーズのキャラクターでおなじみ。

飯田淳さん
ハイブランドからカジュアルブランドまでのイラストレーション。ロゴデザイン、テキスタイル、広告、エディトリアル、パッケージなど、幅広いジャンルと表現力をもって活躍。 進行役は飯田淳さん。

飯田_まぁ、そんなことで形の話になってきましたけども。そんなのでまた、ちょっと難しいっていうか、原田さんの話を進めていきたいと思うんでね。えぇっと、ちょっと。じゃぁ「イラストレーションの個性について」。これ、原田さんが質問を受けて喋っています。これ、ヒロさん、こういう感じのこと聞かれますか?個性が必要かどうかということはもちろん、俺はこういう個性で年商いくらだ、みたいな(笑)

上田・赤・ヒロ_(笑)

ヒロ_僕は20代はもう、自分の個性を見つけるっていうのがもう…必死でしたね。イラストレーターとしてデビューするにはとにかく個性があって、キャラクター性がないとダメだと思ってたんで。もう、いろんなこと描いて、やってたんですけど。なんとなく出来てきたかなっていうのが30歳くらいなんですけど。それがこう…バカバカしくなってきちゃって。で、個性を捨てようと。逆に。個性を放棄して「何やってるんや」って状態に持ってったのが、僕の中であって。イラストレーションっていうかビジュアルを自由に作ろうっていう解釈で。だから僕にとって個性っていうのはイラストレーターにとって必要なものだったのだけど、逆に僕のクリエイティブを縛るものだったので、もっと自由にいろんなものを描きたいと表現したいというところにいきました、僕は。

飯田_先生(上田さんを指して)。
上田_私はさぁ…今の絵しか描けないからしょうがないんだけど…(笑)
飯田_見つめられてもね(笑)
上田_ふふふふ(笑)
会場_(笑)
飯田_「描けない!」って言われてもね(笑)

上田_写実的に描けって言われたら、描けますよ。でもそれで仕事をしてるとは全然思わないから。写実みたいな絵を描いてもさぁ…「上手いな」って自分では思ったりするんだけど。でもこれを仕事にしていくとなると、本当すごい…大変。うん。だから、まぁ…やっぱり、私のふさわしい線と色、フラットな画面みたいのは…なんか、ブレずにそのまんま…やっていける。それも仕事してきた内に段々出来てきてたものでは…あるんですね。最初からそうだったわけではないし。さっきお見せしたねこちゃんシールなんかは、色えんぴつで描いてある。…そんな風にしてたこともあるんですね。画材を変えたら、絵もまた変わったりするんですけど。まぁ、今やっている仕事の積み重ねがいつの間にか…個性になっちゃった?っていう感じでしょうかね。

飯田_上田さんの絵は見ればすぐ分かりますね。『キレイキレイ』。ねぇ、非常に強い個性っていうか…"形"ですよね。原田さんと上田さんは非常に近い感じで。そういった意味で洗練されてるなって感じますね。
上田_「お弟子さんなんですか?」って言われたこともあります(笑)
飯田_違うんですか?
上田_違うわよ(笑)
会場_(笑)
飯田_赤さんは…?

赤_それはもうね、全然。自分は個性がないんだって。自分の見方が個性だって思っているから。あまり、どうでもいい話で。個性というのは意識する必要、全くないんじゃないかな。自分をもっと体現した時の、自分の見え方。自分にどう見えてるかってだけを表現していけばいいと思ってるので。まぁ、それが個性と言えば個性かなぁ?(笑)

飯田_よくね、バレットクラブに通う人のファイルを見せられたときにね、「私はこういう個性でやりたい、こういう風に描きたい」ってね、個性ってことを熱心に話されますよね?で、あの…個性っていうのは何に対しての個性かな…って思うんだよね。イラストレーションっていうのは時代と共にあるじゃないですか?簡単に言えば流行ったらいい、何やってもいいみたいな。この時代ならこれが個性に見える、けれど、それが変わっちゃうと、これまでの個性的なものがまた違って見えて、これが個性的に見えてきたりするね。どんどん変わっていっていいと思うんです。その…車のデザインが変わるみたいに。だからそれが個性だし、時代時代に合わせるのが個性だなという風に僕は思ってます。
ところで原田さんはどう思っているか?(笑)

上田・赤・ヒロ_(笑)

飯田_「イラストレーションの個性について。個性やオリジナリティはいらない。それよりも他の人が手掛けていないジャンルをやることが重要です。そうすれば個性があるように見えるものです(※1)

上田・赤・ヒロ_(笑)

飯田_「個性があることや人と違う絵を描くことが強迫観念のようになってしまっているようですが、もともとイラストレーションの定義は"図解"。誰が見ても何を描いているかがわかり、複製された時に大勢の人がいいと思うものがイラストレーションです。あくまでも大事なのはテーマや内容に添っていること(※1)」です。

ヒロ_いいですね(笑)
上田_正解!(笑)
赤・ヒロ_(笑)
飯田_ヒロさんが言ってることと似てるよね。
ヒロ_そうですね。

飯田_…ということなんだよね。「いらない」って言わちゃってもねぇ…世の中困っちゃう。それでね、個性的に生きなさいっていうのがあるから。今だと例えばねぇ…具体的に言うのはあれだけど…みんな一緒でしょ?ああいうのは嫌いなんですよ、はっきり言って。一緒だから。あれは個性って言っていいのか…どう捉えていいか分からない。面白くないなっていうのはあるよね。なんせ、自分がこんなに個性を出しててもさぁ、「いらない」とは言えないんじゃないの?というのはありますけど…原田さんはそう言ってるんですよ。………ね、会場の皆さん、シ〜ンとしてますけどね(笑)

上田・赤・ヒロ_(笑)
会場_(笑)

(※1)2009年 No.12 『イラストノート』イラストレーションの個性を探る特集 インタビューより抜粋

上田_今の話で「何を描いてあるか分かんない絵」を描いちゃいけないって言ってたじゃないですか。それはパレットで生徒さんの絵を見てたまに思うんですけど。自分だけは「これは何です」って分かって、見る人に分からせようとしない絵を描く方が…いますね。「これ…なあに?」って。後、謎かけをするように…「これは…これかな?」って言うと「アタリです」とか言うんだけど(笑)そこまでに結構時間が掛かってる。パッと見てそれが、さっと描いた絵でも、きちっと描いた絵でも"何を表しているのか"っていうのが分からないとイラストレーションでは困るかな…と思うのよね。

ヒロ_そうですよね。インターネットの広告なんて3秒で認知されないと役に立たないですからね。駅貼りのポスターで描いてあったとしても。
上田_電車でバッと通った時でもね。

ヒロ_そう。そこで何かなって考えても、通りすぎちゃうわけで。イラストレーションの役割っていうのは、こう…一目見て伝えたいことが3秒で伝わっている…そういうことじゃないと、いけないのかなって気がします。

飯田_そうあんまりね、こう…パッと見て…分かりやすいだけだと、また味気なかったりね、してくるし。その辺のあたりの加減が難しいところですね。ヒロさんはやっぱし、もちろんイラストレーション、コマーシャルアートも描いてるし、現代アート的なね、こともされてますけど。その違いみたいな…。よく聞かれるんだよね、ファインアートとコマーシャル、どう違うんですか?みたいな。それ、ちょっと離れちゃうかもしれないんだけど、そう言ったとこにいるのはヒロさんだけなんで…。

ヒロ_えっとー。僕はイラストレーションと現代美術で、両方のフィールドで作品をやってるんですけども。コマーシャル…。まぁ、イラストレーションって言うのはオーダーが来て、そのクライアントに対してそのオーダーに120%答えると。で、もし、クライアントが「ここが赤がいい」って言えば、出来るんです、普通に。でも、その…ファインアートの方は、全てが自分の責任の中で作ってるんで…1mmたりとも、誰にも何も言わせない。自分の為にそれを作る。それが売れるか売れないかで勝負してるっていうことですよね。だから全くベクトルが違うところになります。

飯田_まぁ、それ、マーケットが違うってことに、なるんですよね。
ヒロ_そうですね、はい。

飯田_求められていることをね、そう形作るってことだと思うんですけど。でも技法的にはね、僕、ファインもイラストも考え方だと思うんだよね。赤さんはね、水彩で描かれてるし。

赤_まぁ、とにかくあれ、イラストレーションの個性っていうのは、何と言うか広告とか一般になった時に、味があればいいじゃないか。それで面白がらせればいいと。ちょっとしたこう…味付けなんだよ。味付けとしてちょっとスタイルがあるといい。そう思う。

飯田_ちょっとスタイルって…どんなちょっと何ですか?(笑)

赤_ちょっとスタイルがあるとね、面白く見える。それはサービスだよ。サービスはあっていい。個性はなくていいって言っているんだけど、だからちょっとした…何て言うの、サービス?ファンサービスはするね。

飯田_それは分かる。原田さんの絵を見てるとね、(初期作品から順番に並べられた壁から真後ろの作品までをを指しながら)そうすると、画材がさぁ、パステルとかエアブラシ的なボカシ?が時代だよね【1】
所謂その…なんだ、エアブラシとかさぁ、流行ったあの時の感じがすごく出てて、時代と共に個性を変えてるなって感じもするんだよね。しないですか?この頃こんなだったなぁ…みたいな。学生の時に感じたことがすごくここに出てるなって感じなんだよね。
でもその中で、ちょうど上田さんのマンションにある鉛筆のスケッチ【2】、めちゃくちゃ上手いですよね!

飯田さんが学生の時に感じたことが出てる…と話していたイラストがこちら。70年代後半から80年代前半の作品でパステルやエアブラシを用いて描かれている。

飯田・上田・赤・ヒロ_(振り返って背面に飾られているスケッチ作品を見る)
上田・赤_うん。
ヒロ_上手いですね。
上田_これが【2】なんか気になったんです。

飯田_これはだぶんね、個性をだそうだなんて思って描いてないと思うんだよね。やっぱ線が個性的って原田さんの線なんですね。そういうことってあるんでね…やっぱり"形"が自分の形っていうのは、自然とそうなってくるのかなって思いますけどね。

上田_早いよね、これね。ペンがすごく走ってるのよね。
ヒロ_うん。

「築地明石町界隈」1980年。『話の特集』に掲載した原画とスケッチで、上田さんが気になった作品は丁度センターに配置されている。

この作品は『原田治のイラストレーション展』のDMのビジュアルに使用された。

飯田_その中で、原田さんに限らずどうしてこんな形にするのか、ってここに書いてあるんですけどね。原田さんは小学校1年生の時に、絵の教室?絵画教室だよね、行ってるんだよね。川端実さんっていうね、抽象画の先生のところ。小1ですよ?6歳?(と赤さんに聞く)

赤_うん。

飯田_ずっとそこの先生に師事してて。で、中学校の時に新しい抽象画に目覚めた。中学で。まぁ、所謂ニューヨークスクール的なヤツで、ポロック(ジャクソン・ポロック)とね。ああいうのに目覚めたと。夢中になってたと。その後高校の時にハード・エッジの抽象画に夢中になってた。ハード・エッジっていうのはケリー(エルズワース・ケリー)とかステラ(フランク・ステラ)とかね、ああいうつるっとした、ああいう作家に目覚めて夢中になった。で、卒業後は画家になりたいと思ってたんだよね、原田さんね。だって小1からやってるわけだから。で、そこで原田さんの先生に、あの…画家になりたいということを相談したというエピソードが書いてあるんですけど。先生、何て言ったかと言うと「一生働かずに絵だけ描いていけるかお父さんに相談しなさい」

上田・赤・ヒロ_あははは(笑)

飯田_"お金の為だけに絵を描いてはいけない"って言われたんだと。それでスパッと諦めて、多摩美のデザイン科に入ったんですよね。…そういう話なんですけどもね(笑)まぁ、本人が言ってますからね(笑)
その辺の…何て言うの、見限り具合?諦めちゃった?違うんだなって思ったその気持ちって何て言うんですかね、コレ「一生働かずに絵だけ描いていけるか」…純粋に絵だけ描くって厳しいのかなって思ったのか?それとも新しいイラストレーションっていう分野が見えたのかもしれないですね。
で、原田さんが入学して2年生の時にイラスト専攻ってできたって書いてあるんですけど。その時ってだから…イラストレーターってそんなに儲かる商売じゃなかったんじゃ…

赤_あの頃はね、和田(和田誠)さんとか多摩美で結構評判が良かったんだよね。それで何か「もしかして食えるんじゃないかな?」って俺なんか思っちゃったもんね(笑)

飯田_食ってるじゃないですか!
上田・ヒロ_あははは(笑)

赤_好きなことだけやって、それでいいんだったら、いいね!って。それって結構同じように思ったんじゃないかな。同級生。1年生の時から同じクラスだから、ずっとそう思ってたと思うよ。

飯田_何年ですか、大学入った時って?
赤_え?
飯田_1900…1970…
赤_何年か忘れたな(笑)
上田_1965年くらいじゃない?
飯田_1965年くらい?

赤_あの当時が激動の時代だったんだよね、世の中が。全学連も盛んだし。学校も卒業の時、閉鎖しちゃうし。もう、ひどい時代よ。それこそあれじゃない、何か、刑事が殺されたりさ…それが俺が大学卒業してすぐぐらいだからさ。あの…浅間山荘もそうだしさ。月に飛んで行ったりとか。なんかこう…動いてる時代って感じ。だから、不思議。そういう時代に乗り合わせちゃったみたいな(笑)

飯田_原田さんはその後でも、発表しない作品、抽象画を描いてるんですよね。
赤_そうです。

飯田_陶版とかね、なかなか見る機会はないけれども。見せてもらいましたけども。あれはすごい好き。美しい作品だと思っていますけれど。後、コラージュ【3】とかもね。いいんですよ!その辺でまた、何んかやってもらいたいぐらいだし。欲しい!!綾ちゃん、欲しいんだけど(笑)なんちゃって(笑)

一部のコラージュ作品とオブジェの作品は『ぼくの美術ノート』に掲載されています。気になる方は是非ご一読を!

赤_あははは(笑)

飯田_で、この抽象画からあっちの(キャラクター作品が飾られた壁を指差す)キャラクターって、何かひとつのね、関連性がある気がするんだよね。原田さんの"形"の中でね。

飯田_高校まで、そこまで…抽象画とかそういった形態に関しての仕事しちゃったら、やっぱり抜けれない…何かがあると思うんだよね。
上田・赤・ヒロ_うん。うん。
飯田_そこがやっぱ基礎力かなと、そんな気もしたりしますけどもね。うん。

 

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