Introduction
1970年代後半から90年代にかけて、女子中高生を中心に爆発的な人気を博した「OSAMUGOODS(オサムグッズ)」の生みの親、原田治(1946–2016)。
50〜60年代のアメリカのコミックやTVアニメ、ポップアートなどから影響を受けたイラストレーション―とりわけ、簡潔な描線と爽やかな色彩で描かれたキャラクターたちは、その後の日本の“かわいい”文化に多大な影響を与えました。没後初の全国巡回展となる本展では、イラストレーターとして活動するきっかけとなった、1970年代「an・an」の仕事をはじめとして、広告・出版・各種グッズなど多分野にわたる作品を中心に、幼少期~20代前半の初期資料や、エッセイ集『ぼくの美術帖』関連資料も交えて展示し、時代を超えて愛される、原田治の全貌に迫ります。
創作の森は、約20ヘクタール(東京ドーム4つ分)の里山を整備し、人と自然がふれ合える森として1998(平成10)年に誕生しました。広大な敷地の中に美術館アートコア、国内有数の設備を誇るガラス工房、陶芸・ろうけつ染めなどの創作工房、創作活動を行う作家のアトリエを有します。森の中を散策しながら、敷地内に点在するアーティストの野外作品を鑑賞できる体験型の美術館です。 敷地内は自由に散策できるため、近隣の方たちは散歩コースとして訪れることも。
【交通お得情報】
あわら市では、観光スポットまでワインコイン(500円)で行ける「あわらぐるっとタクシー」を運行中です。 各駅から創作の森までの移動は、お得で便利な「あわらぐるっとタクシー」をご利用ください!(※JR芦原温泉駅からタクシーで約15分、あわら湯のまち駅からは約9分)詳しくはこちらをご覧ください。
美術館の入り口へ向かう途中、特大のJILLがお出迎えしてくれました。
展覧会が始まります
【画像左】展覧会受付はこちらです。奥はOSAMU GOODS特設ミュージアムショップとグッズ専用のレジがあります。【画像右】展覧会の入り口。トンネルのような暗い通路の向こうに浮かび上がるJILL。展覧会への期待が膨らむワクワクする演出です。
フォトスポットとしてすっかりお馴染みとなったJILLのネオンサイン。こちらのブースはネオンが引き立つように、照明を少し暗くしています。そして中のへ移動するごとに、照明は徐々に明るくなるよう考えられています。
美術館配布の会場MAPより。受付や特設ミュージアムショップ、フォトスポットのJILL・JACK・DOGのネオンサインの場所、各展示作品の観覧順が記載されています。各配置を説明することで作品群を心ゆくまで楽しんでもらいたい!という配慮が嬉しいですね。
会場設計を担当した五十嵐瑠衣さんに本展についてお話を伺いました。「壁を斜めに配置することで、三角形の空間を作りました。ここを展示ブースにすることで、会場を最大限に活かし、効率よい展示ができました。また余分な通路を無くすことで、移動するごとに新しい展示が目に入る仕掛けになっています。場所によって、ずっと先の展示まで見渡すことができるんですよ。その他、入り口と出口に仕掛けがあったり、対比が面白い作品の配置にしたりと、見どころを作りました。皆さん、本展をお楽しみくださいね。」
「川端実のアトリエに通った少年期」より。原田治さんは小学校1年生の時、自ら希望してアメリカ抽象表現主義の画家の一人となった川端実のアトリエに通います。ここでは原田治さん幼少期の頃の絵画や絵日記を展示しています。「子どもの頃から特別の才能があったのね」と感心しながら作品を見入るお客様。
「ニューヨークへ」より。ここでは原田治さんが大学卒業後、ニューヨーク滞在時に描いてたイラストを壁紙風に展示しています。本展、人気の撮影スポットです。
「an・an創刊、イラストレーターデビュー」より。【画像左】雑誌「an・an」1972年3月20日号の「再見香港」のイラスト原画。原田治さんにとって香港は70年代にananの取材で訪れたときから、特別な想いがある地だったそう。その想いが伝わってくる作品です。海外初となった「原田治のOSAMU GOODS展(2023年7月20日から8月13日まで)」は香港で開催されました。
北陸で初開催とあって、初日から盛況でした。近隣にお住まいで、ご家族皆んなでお越しになったお客様は「全国で人気の展覧会と聞いて、楽しみにしていました」、石川県からお越しになった20代女性グループは「2ヶ月前に美術館のwebサイトで開催情報を見て、初日に行こうと決めてました!」と、本展を心待ちにしていた様子でした。会場にいらした50代女性に展覧会の感想を伺いました。「原田治さんの作品と共に過ごした青春時代を回想して、懐かしい気持ちになりました。これまで知らなかった作品にも触れることができて楽しい展覧会です。若い方にはこの世界観を楽しんで貰いたいですね。最終日までにまた観たいと思っています」
「an・an創刊、イラストレーターデビュー」より。雑誌「Hanako」の連載コラム「KABUKI」のタイトルロゴ(1990〜93年頃制作)。天秤桶や張子犬、髷など歌舞伎の小道具が描かれています。モダンなセンスで歌舞伎の魅力を伝えている貴重なレタリング。
展示ブースは薄い壁を使って作られています。会場設計を担当した五十嵐さん、薄い壁を使って展示ブースを設計するのは初めての試みだったそう。「歩きながら会場を見渡すと、スパっと線で空間を区切ったように、各展示ブースが際立って見える効果がでました。」
「オールラウンドのイラストレーターとして」より。原田治さんはイラストレーションのあり方について、「あくまで大事なのはテーマや内容にそっていること」と語り、自在にスタイルを変えて作画しました。様々なタイプの需要に応じるため、5年間で10種類の描写スタイルを編み出しました。
1981年に描かれた東山千栄子【画像左】と三遊亭円生【画像右】。作品を観ていたシニア男性は「我々世代は懐かしい人たちですなぁ」と、繊細な描写を確認するようにじっくり鑑賞されていました。本展の魅力は、年代を問わず楽しめる “刺さる”作品に出会えること。それは原田治さんの作品が多彩であったこと、普遍的な魅力を備えているからです。OSAMU GOODSブームをリアルに体験した50〜60代の方は、懐かしさと共に新たな魅力を再発見できます。若い世代は、色褪せないキャラクターたちに「かわいい」を発見するでしょう。
「絵本の仕事」の展示ブースから見た会場全体の風景。先の展示まで見渡せるように設計されていることが分かります。歩きながら展示を観ていくと、視界が狭まったりポンと開けたりして、予想しない景色が出現します。観覧が楽しくなる工夫がいっぱいです。
「装幀の仕事 — 思考を包むパッケージ」より。アメリカのグラフィックアートやポップアート、抽象画などからインスピレーションを得た装幀本のコーナー。展示された装幀をじっと鑑賞する女の子。読んでみたい本が見つかったのかな?
「絵本の仕事 ― 何が今の子供たちに必要か?」より。これまで手掛けた絵本を紹介しています。『OSAMU'S MOTHER GOOSE(復刊ドットコム)』を始め、『かさ (福音館書店)』、『おおきいちいさい―子どもの力を引き出す絵本 (ひかりのくに)』は現在も読み継がれています。
- 会 期
- 2023年7月15日(土)~9月24日(日)まで
- 入 場 時 間
- 10:00~17:00まで(最終入場は16:30まで)
- 休 館 日
- 月曜日(祝日の場合開館、翌平日休館) ※8月14日(月)は開館
- 観 覧 料
- 一般 800円(600円)/中学・高校生600円(400円)/65歳以上・障がい者 各半額
小学生以下・障がい者の介護者(当該障がい者1人につき1人)無料
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- ※( )内は有料20名様以上の団体料金
- 主 催
- (公財)金津創作の森財団
- 共 催
- あわら市/あわら市教育委員会/福井新聞社
- 協 力
- コージー本舗/トムズボックス/パレットクラブ
- 企 画 協 力
- 世田谷文学館
- 企 画 制 作
- コスモマーチャンダイズィング
- 会 場 設 計
- 五十嵐瑠衣
- アートディレクション
- 服部一成
金津創作の森美術館 アートコア |
住 所 |
〒919-0806 福井県あわら市宮谷57-2-19 |
T E L |
0776-73-7800 |
開 館 時 間 |
9:00~17:00
(企画展は10:00~/夜間は貸館に応じて22:00まで) |
休 館 日 |
月曜日
(祝日開館・翌平日休館)・年末年始 |