NEWS –ARCHIVES–

OSAMUGOODS NEWS

PALETTECLUB特別企画 原田治のイラストレーション展

1
2
次のページ

トークショー出演者プロフィール紹介。画像左より

赤勘兵衛さん
自然をテーマに描く事が多い、広告美術の世界では毎日広告賞、フジサンケイ広告賞、カンヌ国際広告賞銅賞、CMフイルム銀賞、ACC賞.ADC賞、ニューヨークADC銀賞、電通賞、読売広告大賞など。

ヒロ杉山さん(エンライトメント)
ファインアートの世界で国内外の展覧会で作品を発表する一方、フリーペーパーやアートブックの出版、広告や雑誌、CDジャケットなどでも独創的なグラフィックを発表し続けている。

上田三根子さん
明るくポップな画風と、お洒落なセンスは人気が高く広告・雑誌の仕事に加え、エッセイ、コメンテーターと幅広い分野で活躍。 LION「キレイキレイ」シリーズ、プレイステーション用ゲーム「ぼくのなつやすみ」シリーズのキャラクターでおなじみ。

飯田淳さん
ハイブランドからカジュアルブランドまでのイラストレーション。ロゴデザイン、テキスタイル、広告、エディトリアル、パッケージなど、幅広いジャンルと表現力をもって活躍。 進行役は飯田淳さん。

飯田_最後になるかもしれませんけど…「イラストレーションを描く心構え」。
ヒロ_心構え?

飯田_心構え。難しいかもしれないけど…イラストレーターとは何かってことを原田さんがこの雑誌(※1)のインタビューで喋ってるんだけど。まぁ、イラストレーターの心構えとは何か?イラストレーターとは何なのか?どういう存在なのか?仕事としてもそうだし…と、いうことを…難しい?僕は先に読んで答え知ってるから言えるけど…

飯田・上田・赤_ははは(爆笑)
会場_(爆笑)
赤_ビジュアルで伝えるっていうのがイラストレーターの役目なんじゃないの?究極。"目で見て伝える"っていう世界。
飯田_視覚的に。
赤_そうそう。伝達。僕はそれ。

ヒロ_まぁ、そうですね…。心構え…本当に役割としては、ライターが文章なら、イラストレーターは絵で物事を伝えるのが大前提なんですけど…。心構えで言うと、僕、如何に楽しんで仕事をするかっていうことが…

飯田_自分が?

ヒロ_自分が。自分が描いた絵っていうのが、仕事は仕事なんだけど…仕事になってしまうと、絵ってすごくつまらなくなってしまう人がいて。僕の中ではこう…どれだけ楽しんで描けたかっていうことが、世の中にポスターになったり、雑誌になったりして出た時に、人々に"伝わる"のが一番。そういう絵をいつも描いていきたいなっていうのがあります。

飯田_うんうん。

上田_私もあの…おふたりがお話したように、ほぼ同じなんですけど。例えばその、私が女の人を描くとするじゃないですか。この女の子に何着せてあげようとか思うんですよ。

ヒロ_うん。

上田_可愛い服…可愛い服って、それは私が今思う可愛い服で、世間が思う可愛い服とはまた違うんですけど。そうすると…こういう服着せたら格好いいよなとか。なんかそれは…自分が楽しんでるのね。そうすると、それが結果的に仕上がったものが、何かパシっと見えたりとか…。そういうことがありますし。本当にあの…まぁ、仕事の中では…つまんない仕事もあります。いつもいつも楽しい仕事ばかりではないんだけど、つまんない中にも、どこか面白い部分を見つけたいなと思いますね。そういう感じかしらね?

飯田_原田さんのを言う前に自分のことを言った方がいいかもしれないね?
上田_お話になったら?

飯田_あの…料理屋、レストランに例えたらね…寿司屋の高い店というよりは、何でも出す、ファミリーレストランみたいなイメージね、イラストレーターの。お客さんがカレー食べたいって言ったら、最高の味のカレーを出す。寿司食いたいって言ったら、最高の寿司を握ってあげるし。エスニック料理のフォーが食べたいって言ったら、フォーを出してあげる。それは食堂みたいな味っていうよりは、もうちょっとレベルを上げてっていうこと。それがイラストレーターと思ってるんですね。「俺ん家はこの味だから、これを食え!」っていうのもあったっていいと思うんだけど。そうじゃなくて、それぞれいろんな料理を平均的に上手く出せるのが、最終的にイラストレーターが目ざす所で、心構えですね。
じゃあ、原田さんが何て言ってるかね。つい、クイズの答えを言ってるみたいになるね(笑)

上田・ヒロ・赤_(笑)
会場_(笑)

飯田_「イラストレーターは芸術家ではなく、お客さんを喜ばせる芸人です。イラストレーションの面白さはエンターテインメント性にある。僕は人の喜ぶ顔を見たくてイラストレーションを描いています。(※1)」原田さんが、最初にイラストレーションで人に喜んでもらう体験が何だったか。原田さんはミッション系の高校に通ってたんですね。青学だよね?

上田・ヒロ・赤_うんうん。

飯田_中学・高校かな。その時にね、自分の彼女に「賛美歌のブックカバーに彼女の好きな犬の絵を描いてプレゼントしました。そしてそれを見た女生徒から注文が殺到。その人を喜ばせたいから、その人のライフスタイルまで考えて描きました。(※1)」これが、原田さんの"イラストレーターとは何か?"(笑)
上田・ヒロ・赤_(笑)

飯田_「喜んでもらった」。分かりやすいでしょ?
ヒロ_分かりやすいですね。
赤_うん。
飯田_そういう部分が女の子の気持ちをキュっと掴んでね(笑)こう…ね(笑)隅に置けない所が…(笑)
赤_あはははは(笑)
上田・ヒロ_(笑)
飯田_…当時、あったんでしょうか(笑)分かんないですけど。原田先生、真面目だって言ってましたけどね。何で犬が好きって分かったのかな?戌年だから?
赤_俺が大学の時にさ、ウエスタン(ミュージック)やってたんだよ、彼。
飯田_同じクラブです。
赤_舞台に立ってやってたんだ。結構、活躍したんだよ。
飯田_楽器でギター弾いてたんですよね。
赤_バンジョー。
飯田_チューニングは出来なかったですけどね…
会場_(笑)
飯田_バンジョー、チューニングメーターがないんだからね!(笑)音叉でポーンなんてやってる時代だから!
赤_はははは(笑)
上田・ヒロ_そうそう。
会場_(笑)

飯田_そんなことで、「芸術家ではない」って所が原田さんのすごく好きな所です。芸術家的な感じで、こう…考える方もいらっしゃるけど…それは間違いじゃないと思うけど…。原田さんと話をした時に…基本的に俺たちは芸術家じゃないよねって。広告や雑誌からの注文を受けることで生きてるんだってずっと言ってますけど。抽象の作品を描いてましたけど、人に売ったりはしてないよね。

赤_うん。

ヒロ_湯村さんもよく同じことを言ってましたね。「杉山は芸術家になるのかイラストレーターになるのか、はっきりしろ」っていうことをよく言われてましたね。そこにはこう…線で切ったらいいだけっていうか。

飯田_出来てくる世界観で、結論ね…ファインアートっていうのは表現の差では…
ヒロ_ない。
飯田_…ないですもんね。
上田・赤_うんうん。
飯田_その辺、自分でもいろいろやってたりしますけど…じゃあ印刷されればね、コマーシャルなんかに。版画やシルクスクリーンなんかに…その辺の差はないね。ただやっぱり、人から発注されることが仕事なんでね。
ヒロ_うん。
飯田_自ら描くのとは違うじゃないですか。
ヒロ_そうですね。
飯田_「誰々の、何々の為にやってください。こういうマーケット、ターゲットがあって…」それに対して、描くってことの面白さだから。
ヒロ_そうですね。
飯田_上田さんは幅広くゲームからパッケージからね、やってるじゃない?
上田_はい。
飯田_その辺の作画としてね。

上田_イラストレーターって、クレバーっていうか、頭がちゃんと相手の言うことを理解して、それプラスそこに何かを…オマケ?みたいなものをね…向こうが100%こういうモノが出来上がってくるかなーと思ってる所に、もうちょい…

ヒロ_うん。
上田_120%にして返していくのが、仕事を続けていくコツなんじゃないかなぁ。100%そのまま返してたら、それは別にその人じゃなくてもいいかもしれないよね?
ヒロ・赤_うん。
上田_うん…そう、思います。

飯田_おっしゃる通りですよね。
あのー(イラストレーターの)今後ね。原田さん、どうしようかという話を書いてるんでね。お客さんをどうするではなく、今の世界がこうだからってことで。9年前のインタビューですからね、時代がまた変わってますけど。「今は広告の仕事が減り、厳しい時代なので、絵以外の得意な分野を持たなければなりません。現在イラストレーション以外の仕事をしてる人は、まずその仕事と関連づけて描くことを考えるべきです(※1)」って言ってます。

上田・ヒロ・赤_うん、うん。

飯田_だから…僕たちはイラストレーターになっちゃったけれども、他の人たちは自分の得意分野、あればそれとイラストレーションをくっつけて、何か新しい分野のイラストレーションが見えてくるものだったらいいんじゃない?っていうことだと思いますね。ダンスが得意だったら、ダンスに関するイラストレーションを描けば説得力があるし、ね。後…料理とかね。そいうのが説得力がある。

上田・ヒロ・赤_うん。

(※1)2009年 No.12 『イラストノート』イラストレーションの個性を探る特集 インタビューより抜粋

飯田_まぁ原田さんもそういうことで、世の中を見て…これから新しい分野で、自分たちが活躍する場を作りなさいってことなんですけど。将来的にね、コレ、みんな同じなんですけど。後、何年間(イラストレーションの仕事中が)出来るかわからないけど…(笑)

上田・ヒロ・赤_(笑)
飯田_どうします?赤さん、どうします?
赤_どうするっていうか、連載7本描いてるから…それ、続けるくらいかなぁーって思ってるよ。
飯田_連載っていつか終わるでしょ?
赤_もう、30年位やってるよ。
ヒロ_長いですね?
飯田_30年?連載っていうかね…それはあるかもね。それは何の仕事ですか?
赤_いいじゃん、どうでも…(笑)
飯田・上田・ヒロ_(笑)
会場_(笑)
赤_俳句の雑誌とか、結構やってるのがあって。載ったらやる、みたいな。そんな感じの自由さが一番いいんじゃないかな?ヘンな評判があると、何か…縛られちゃうんだよね。それって結構、不自由だから。
飯田_うん。
赤_思いつきでやってるのが、一番いいなぁって(笑)

飯田_そう…原田さんも「OSAMU GOODSを作った時は、何も縛られないからやった」って、書いてありますよ。
赤_うん。

飯田_全部ディレクション出来て、デザインも出来るから。逆に言えば、仕事は多いんだけど、好きに出来るってことが魅力だったんですよね。やっぱり、いいよね。そういうクライアントがひとつでもあると、すごい楽しい。

赤_うん、うん。
上田・ヒロ_うん、うん。
飯田_それ、僕も思います。同意見です。
赤_うん。
飯田_そういう人は大事にしたいなと思いますよね。
赤_うん、そう…大事にしたい。
飯田_大事にしたら、大事にしてもらえるし…そういう関係が作られるから。ヒロさん、どうでしょうかね?
ヒロ_イラストレーション?
飯田_そう、これからどうしようか?

ヒロ_これから?そうですね…僕自身というかイラストレーターは、これから厳しい時代になっていきますね。益々ね…。何かこう…さっきの話になるけど、コミック的なことがイラストレーションって呼ばれ出しちゃって…僕らが認識しているイラストレーションとはもう違う…イラストレーションが出てきて…僕なんかが見ても漫画の絵が広告にされたりとか。それに対してイラストレーションって言い出してるし…あそこと何かこう…同格に勝負する気にもならないし…別ものなんですよね。
もう、使う側もその世代になってきてるんで…。だから本当、メディアと僕らが認識しているイラストレーションというのは、もう…考えがズレてるのかな…と。そんな気はしていますね。だからどうしろ、ということではないですけど…。

飯田_まぁ、その中でね、好きなものをね。代案じゃないけど…何点か考えるものいいし。で、好きな中にね、楽しみもあるものとかね、飾って頂くっていうのは…それがイラストレーションになるのかなぁとは思いますけどね。

ヒロ_そうですね。

飯田_後、イラストが生み出せるような空間を作るんだったら、それを全部自分たちで出来るような…信用してもらえれば、だけれどね。…それが出来るようになっていけば…。

ヒロ_それはいいですね。
飯田_上田さんはいろんなことやってるよね。
上田_うん…でも…昔に比べると仕事量、減ってるよね?減ってますよね?
ヒロ_うん。

上田_やっぱりもう、小さなカットとか…そんなのは編集者が頼みづらい…(笑)みたいだし…(笑)。いや、だってねぇ…「5,000円じゃ描かない!」とかって、きっと私だったら言うと思うから…(笑)

飯田_言ってんでしょ?(笑)
上田_えぇ!?(笑)あの…やっぱり表紙とか…そういう、やっぱり長く…20年くらいずっと続いてる仕事を…キレイキレイだって20年ですしね。
飯田_長いですね!
上田_そういう、長く…私の絵を分かってくれて、使ってくれてるトコは…一生懸命やらなくちゃなっていうのはありますよね。
ヒロ_うん。

上田_それでまぁ、新しい仕事が入ってきたらそれはやりますけど…。やっぱりね、若い人たちが…何て言うんだろう…描きやすい…環境…?やっぱりそこなのかなぁ?…さっきも言ったギャラのことなんかも本当にねぇ…これだったらコンビニでアルバイトしてた方がいいとかね…ってことだけ考えたら、もういいんじゃないかと思うようなヒドいことだってあったりするでしょう?

ヒロ_うん。

上田_私…やっぱり、私が言うのは自分の為だってのもあるけど、やっぱりこれはヘンだよっていうのを…その…編集者なり会社の人に、認識してもらい…たいな、ということもあるから…。これでいいんだと思われちゃったら、もっとヒドくなっちゃう!って思いがあるので…。

ヒロ_うん…そうですよね…。
飯田_だんだん暗くなるよね、話がね(笑)
上田・ヒロ・赤_(笑)
会場_(笑)

飯田_でもこれからいろいろ、活躍する場所があるしね。いつの時代も新しく出てくるわけだからね。絵は好きだし…。日本くらいでしょ?いろんなものに絵がくっついてる国ってのは、ないよ?靴、ソックスから…それこそ、何んでもキャラクターがいろいろ着いてる。それはイラストレーターが活躍する場があるってことだよね。そういう所を見つけ出す。

ヒロ_うん。

飯田_原田さんが言う新しい仕事っていうのは、要は自分の持ってる仕事?と専門性みたいなものとをくっつけるといいんじゃない?って言ってるんでね。まぁ、これからパレットクラブスクールに来ているような、そんな人は考えて、自分の個性とか仕事のターゲットを絞っていくのがいいかなって思うよね。じゃないと…もうできないよね、新しくね。

上田・ヒロ・赤_うん。

 

1
2
次のページ

関連記事_OSAMU GOODS NEWSより